三間寝太朗は三間飛車の夢を見るか

三間寝太朗という人が趣味である将棋について色々と書いているだけ

現代矢倉の更始 - その1

ヘビー級が動くが如く、ボクシングは動く。

ボクシングの世界には誰が言ったか、こんな言葉がある。

これを棋界になぞらえるならば、さしづめタイトルホルダーが動くが如く、将棋は動く。と言った具合か。

将棋ソフトがプロより強くなり、棋界の絶対王者であった羽生さんがタイトルを失い、多くの若手が台頭してきたなど多くの変化を抱える棋界は大きな転換期を迎えている。

 

そんな時代の流れの中でソフトを用いた序盤研究によって戦法の移り変わりは激しく、その煽りを最も大きく受けたのが矢倉だろう。

居角左美濃急戦によって新24手組は最序盤の6六歩が悪手となり、6六歩の代わりに7七銀と指す旧24手組が主流になった。

しかし、旧24手組にも大きな弱点があった。

中央5筋が新24手組よりも弱かったのである。5筋の弱点を突く将棋は矢倉中飛車など古くからあり、それを避けるべく生まれた新24手組だった。

その新24手組が廃れた今、矢倉の駒組は更に進化し、多くの急戦に立ち向かおうとしている。

今回は進化した矢倉の新たな駒組について筆者が稚拙ながら解説していこうと思う。

 

【第1図は6二銀まで】

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~初手からの指し手~

▲7六歩 △8四歩

▲6八銀 △3四歩

▲7七銀 △6二銀

 

3手目6八銀は矢倉を目指すという主張の一手。

続く3四歩に対する7七銀は旧24手組の指し手だ。

この局面での6二銀は自然ながら含みが多く気が抜けない一手。早い段階で6六歩と突こうものなら居角左美濃にしたり早繰り銀を狙う含みもある。

 

【第2図は2六歩まで】

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〜第1図からの指し手〜

▲2六歩

 

この2六歩は旧24手組には無かった新時代の矢倉の一手だ。

この一手の狙いは早繰り銀等の急戦に対しての殴り合う姿勢を見せた手でもあり、後手の作戦を尋ねるような一手でもある。

上の局面は次の一手次第で後手の作戦が大きく変わる序盤の大きな分岐点と言えるだろう。

 

【第3図は3二金まで】

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〜第2図からの指し手〜

△4二銀 ▲2五歩

△3三銀 ▲5六歩

△3二金

 

後手の4二銀はじっくりと指していこうという一手。

代わりに3二金や7四銀は早繰り銀を狙う一手だ。早繰り銀の変化についてはマイナビから出版されている矢倉の新常識が詳しいので割愛する。

この4二銀に対して2五歩は後手が矢倉にするかを訪ねる一手でこの手に対して3三角なら雁木や右四間飛車を見せていくことが後手の狙いとなるだろう。

後手が3三銀と返すことで相矢倉となる。

5六歩は角の活用を目指していく一手で、細かいながらも大切な一手。ここで4八銀を指そうものなら8五歩から早繰り銀で銀を捌こうという手がある。

もしも5六歩に対して早繰り銀を目指そうと8五歩ならば以下▲5八金右△7四歩▲6六歩△7三銀▲6七金△6四銀▲7九角△7五歩▲同歩△同銀▲4六角(下図)となってこれは流石に後手が悪いだろう。

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最後の後手の3二金は後手が8筋を固くして先手からの棒銀などの速攻を手を先に受ける手だ。

第3図から穏やかながら神経を使う駒組みが続く。手も広いため様々な分岐が考えられる。

前例は77期順位戦B級1組12回戦郷田九段対渡辺棋王戦で指された5八金、77期順位戦C級2組高見叡王対高野四段戦で4八銀などがある。

どの手を指しても一局の将棋となるだろう。

棋譜DB2での実践例からの候補手は下記のようになっていた。

  • 4八銀,前例67件,勝率39%
  • 5八金右,前例33件,勝率79%
  • 3六歩,前例9件,勝率78%
  • 7八金,前例4件,勝率25%
  • 7九角,前例4件,勝率75%
  • 6八玉,前例3件,勝率100%

次回はこの候補手の中から最も指されている4八銀を解説していく。